多くのノーベル賞受賞者が過去に受けていることで知られる「クラリベイト引用栄誉賞」の今年の受賞者に、信州大アクア・リジェネレーション機構の堂免一成・特別特任教授(71)が選ばれた。9月30日に長野県松本市の信州大学松本キャンパスで会見して研究内容を説明するとともに、「賞の連絡が来て、驚いた。今後は研究を次世代に任せられるよう、日本人の研究者を育てたい」と語った。
ノーベル賞級と評価された研究者にクラリベイト引用栄誉賞は贈られる。同賞を発表している英学術情報会社クラリベイトは、ノーベル賞の新たな有力候補22人を9月に発表しており、その1人として堂免氏を挙げている。クラリベイト引用栄誉賞が贈られたノーベル賞受賞者には、本庶佑氏や大隅良典氏、山中伸弥氏がいる。
堂免氏は2017年に信州大の特別特任教授に就任。水と太陽光から水素をつくるシステムとして、可視光を効率的に使って水を分解する光触媒を開発した。
クリーンエネルギーとして期待されている水素は、化石資源である天然ガスのメタンと水を反応させて作られているが、製造過程で二酸化炭素も発生する。電気分解など二酸化炭素が発生しない方法で水素を作る研究も進められているが、価格が割高になってしまうという。
堂免氏は効率性が高い光触媒の粉末の研究を40年ほど続けており、光触媒で水を水素と酸素に分解する方法の実用化を目指している。長野県飯田市座光寺では市などの協力を得て、約5千平方メートルの土地に、光触媒が用いられた水分解パネルを設置することで、26年度から実用化に向けた実験を予定している。
堂免氏は「実用化できれば、二酸化炭素を出さずに低コストで水素が作れるようになり、社会に対して大きなインパクトがあると思う。世界中にクリーンなエネルギーを十分に供給できるようになるのが、私の夢だ」と語った。(小山裕一)